2022年度 年次報告(2022年4月1日~2023年3月31日)

2022年度 年次報告 
「はじめに」より

 「意見形成支援」という文言は、権利と同様耳にしたとき、大上段に構えている感があるようです。少なくとも日常用語ではありませんから馴染みはうすく、咄嗟に感覚がそう受け止めてしまうのでしょう。それだけに、日常用語の感覚で受け止められる次元に落し込んでいく作業が、権利同様必至になるのではないかと考えています。

 昨年の年次報告書で私は、チャイルドラインやこどもほっとダイヤルの現場をどのようにつくるかによって、意見形成支援の場たらしめる可能性を示唆しました。今年度のチャイルドヘルプラインMIEネットワークの年次報告書作成のための編集会議は、送られたこの宿題を方向にして開始されていきます。そして昨年同様方向こそあるものの具体的方法は皆目わからない状態で、参加メンバーが出し合う話に触角を敏感にしかもフル回転させ、つかみ合っていく作業になりました。
チャイルドラインやこどもほっとダイヤルの電話では、子どもと受け手のやり取りの記載がないことから、チャットの記録を資料としました。チャットを始めたからできた取組みとも思っています。

 常に自分を信じ他者も信じて生きる私は、今回も大きな喜びを頂戴しました。暗中模索の2回の会議を経て3回目のとき、「それってストレスだよね」と断定にも誘導にもなりかねない受け手の記録に端を発して、意見交換は活発に。メンバーが主体者になっていくのです! そして地面から何かが浮び上がってくるような感覚で、具体的なとりくみに繋がる「何か」がみえてきたのです! メンバー一人一人の発言が「かたち」になっていく瞬間です。この瞬間のために私はメンバーが主体者になる現場をつくりたかったのだと思っています。私がわかっていて教えるのでも誘導していくことでもない空間の共有。自分自身も先が見えない不安をかかえながら懸命に探るメンバーのひとりだからこそ、メンバー一人一人の持つ力の凄さに感動と感謝が自然に生まれてくるのだと感じています。同時にほっとして「肩の力が抜ける」思いでした。ファシリテーターとしてメンバーの想いを結集できたとすれば、そのお導きに感謝です。

 子どもを主体者にするためには、関わる大人の主体が問われます。あまりにも必然なこととして。最前線にいる受け手は果して・・・? 受け手と向い合っていく支え手は・・・? それにも増して問われる組織。リーダー以上でも以下でも所属する組織をつくれないリーダーという存在。そしてそれぞれの組織をチャイルドヘルプラインMIEネットワークという名称のもとに束ねている私たち編集会議の事務局を担当している面々。自分たちのあり方論につながっていくことだと思っています。

 意見形成支援という言葉の持つ概念を仮に1つの山に見立ててみます。例えば意見形成支援山という具合に。この山に登るためには登る人の数だけルートが、方法があるはずだと登る人を主体者にしたとき思います。方向は1つでも方法は人の数だけ成り立つということにならないでしょうか。受け身で事にあたるのではなく自分自身で考え工夫し苦労して頂に立ったとき、達成感はいかばかりでしょう。その積み重ねこそが主体の確立につながっていくと考えるのは、あながち私の一人よがりと云いきれないと私自身は自負しています。自分の成育歴を振り返ったとき信じられるのです。

 子どもからの電話やチャットを受け取ったとき、子どもとの関係を軸にして受け手が投げかける言葉「どうしてそう思ったの?」それに対応してなんでだろうと子どもは、ベクトルを自分に向けて問題を掘り下げることにつながると考えられないでしょうか。「そんな風に考えているんだぁ」と肯定的な受け止め方。「他にはどんなこと考えられる?」etc多様な対応。他者とのやりとりは考えることや問題の整理の原点だと思うのです。そのことは自分の意見や意志を子どもたちが持っていくことに、つまり主体の確立に必ずなっていくと私は信じて疑っていないのです。教え導くのではなく、受け手との関係性で子どもが主体者になったとき、自らの力で勝ち取っていく。受け手という鏡に映し出された自分を受け取ることができれば子どもたちは、自己の再確認がされて、自分をみつめ直しすることになると思うのです。人間は自分だけで自分を知ることは不可能に近いのです。他者との関係を通して又は書くなど客観視するものを使って、自己認識をしていくものなのだと、自分の思春期や青春をふり返ったとき実感できます。
そのためにもいいえそのためには子どもにとり、私たちが「意味ある大人」になっていく大事さを痛感します。「子どもにはチカラがある」ことを信じて。

 今年度は全体で柱立てをして文章化するのではなく、メンバー一人一人が話し合いの中から拾い出した言葉を出発点にして、意見形成支援山への登頂ルートを文章化していく方向で話し合っています。それら出されてきたものは、これからの日常の活動で更に具現化する話し合いを経ながら、同時進行で運営のもとで現場に繋げていく。そうすることによって、意見形成支援を実現させる「チャイルドライン」に「こどもほっとダイヤル」になっていく努力をしたいと考えているところです。

 意見形成支援に取り組み始めたことによって、チャイルドラインやこどもほっとダイヤルが子どもの気持を受け止めていく心の居場所に留まらず、社会教育の領域に足を踏み入れたと思っています。取りも直さずそのことは、私たちの活動がその担い手になるところにきているのだと思い始めています。

MIEちゃんに聞いてみよう

 「MIEちゃんに聞いてみよう」は、チャイルドヘルプラインMIEネットワークのホームページ上で、子ども達がメールで相談するとそれに応えてくれるというものです。相談者には、個別に返信しませんが、相談内容が一つの事例としてホームページに立ち寄った子どもたちが見ることが出来、自分に重ねて考えられるのではないかと思っています。
 相談は「学校・気持ち・友だち・家族・虐待・いじめ・性・SNS・仕事・その他」のジャンルに分かれており、自分自身でジャンルを選び、タイトルをつけてMIEちゃんに聞いて欲しいことを書きます。MIEちゃんからの返信は、子どもたちの心に寄り添いながら、アドバイスやホームページの紹介などの情報提供をします。また、「子どもの権利条約」に照らすことで、権利を侵害されていることに気づかずにいる子どもたちが、自分にどういう権利があるのかを知る機会になっています。

友だち仲のいい友達ができない。
グループではいるけど、省かれたり外されたりする。遠足の座席は1人で座る、一緒に回る人がいない行事もつまらない、お昼も1人で食べている。・・・
気持ち私は役に立っているのか?
6年生の時から、「私は役に立っているのか?」とずっと疑問に思っていました。今でも疑問に思っています。どうしたらこれを解決できますか?・・・
家族死にたい
それに家でも親がめっちゃ理不尽なことで怒ってストレス発散しとんのかなぁって思うと死にたくなるし、すぐ行動が出来ないとお前病気かって言われるけど出来やんのにどうすればいいか分からなくて。・・・
いじめ学校でのいじめ
私は、特別支援学級のある中学校に通っています。実は、交流で通常の人と勉強する時があります。今日先生がいつもどおりプリントを配って前から順番に自分のを取って後ろに回すんですけどそのときにわざと落とされ、前の人に言うと無視をされたりします。・・・
虐待自分はどうしたら良いですか?
友達が親から虐待をされています。その事を、学校の先生や部活の先輩などに相談しました。しかし、外では子供思いのいい親を演じていて、その事を誰も信じてくれませんでした。その事を、何回も相談を受けていました。・・・
学校みんな消えて欲しい
私は陰キャです。陽キャのみんなは陰キャを貶(けな)す態度をします。もうほんとに辛くて言葉にできません。死にたいです。・・・
制服
心は男なので学ランが着たい
中学校行きたくない。・・・
その他過食症について
高校生で学校にも行けていません。4回に1回は過食をしてしまいます。吐けたらいいのですが吐けないのでブクブクふとってしまいます。
心療内科にも行きましたが、先に幻聴から治すべきだと言われてしまい、過食症も直して欲しかったのにスルーされてとても辛いです。・・・

2022年度子どもの声を受け止める

~子ども専用電話「チャイルドラインMIE」・「こどもほっとダイヤル」の
電話データからみえる子どもの状況~

チャイルドラインMIEの報告

 チャイルドラインは、全国68の団体がネットワークを組み実施している子ども専用電話です。三重県では毎日実施できていませんが、実施のない時間は開設している全国のチャイルドラインで受けてもらっています。2022年度全国のチャイルドラインで受けた三重県発信の電話は3,867件ありました。
※使用データは、チャイルドライン支援センターのデータベース(2023年3月31日までに入力完了データ)を使用しています。

チャイルドラインでは、安心して話せる電話かどうか、無言や一言の電話が続いて、やっと話し始める子どももいます。
名前や年齢・性別など受け手から聞くことはありません。会話が成立した1,442件をデータ化しています。

こどもほっとダイヤルの報告

 三重県では、三重県子ども条例に基づき、子ども専用電話相談『こどもほっとダイヤル』を開設しました。子どもの声を受け止め、子どもとともに状況や気持ちを整理しながら子ども主体の解決方法を考えます。専門的な対応が必要な場合は関係機関につなぐことができます。
 2022年度は910件の電話を受け、児童相談センターに6件、教育委員会に3件繋ぎました。

【関係機関】県子ども・福祉部少子化対策課、同子ども虐待対策・里親制度推進監、県児童相談センター児童相談強化支援室、県教育委員会事務局子ども安全対策監、同生徒指導課、同研修企画・支援課(総合教育センター)、県環境生活部私学課、県警察本部生活安全部少年課、県女性相談所、チャイルドヘルプラインMIE ネットワーク